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  • 津田識義

第26回 自社の提供するバリューは何か?



1)バリューとはブランド力と同義


 ブランド(brand)とは、あるサービスを、競合他社の財やサービスと区別するためのあらゆる概念の事です。要するに他のモノとの違いを分からせるというのが勝負のポイントになります。そもそも、ブランドの語源は、家畜などに押した「焼き印(burn)」にあります。昔、農家では自分の牛を、他の牛と識別するために熱く焼いた鉄印を押しました。転じて「ブランドは、「他者との差別化」を象徴する言葉になったと言われています。

 問題は、各社によってこのブランド(≒バリュー)の定義がまちまちであり、ブランドはこうでなければならないという決まりがないというものです。トップによっては、うちは価格が圧倒的に安いことであるという人もいれば、圧倒的品質力、安心・安全であるという人もいれば、提供スピードの速さという人もいます。


 要するに、その顧客に他社との差異が認知され、キャッシュがもたらされることによってビジネスが成立する必要があります。


 国際競争が熾烈を極める中で、必ず模倣の問題がでてきます。単なるロゴにしか違いがないのであれば、中国を筆頭にアジア圏でのビジネスは難しくなります。商標権で自社の権益を守ることに限界があるからです。

 そのような環境の中、競争に勝つポイントは、何年たってもマネされないバリューが存在すること。その提供価値が消費者の心に焼き印を押すことができれば大成功でしょう。



2)ブランド価値の認知にはMVP


 MVPとはMinimum Viable Product(ミニマム・バイアブル・プロダクト)の略で、緻密にセグメントしたターゲット顧客が欲する最小限の機能に絞り込んだバリューを体現したものです。このMVPが他社の追随を許さないエッジの効いたものであればブランドに価値があるということになります。

 「顧客のニーズを満たす必要最小限の製品」で顧客のニーズを検証することを、早期にかつ高速で実施する事に意味があります。

 当たり前と言えば当たり前なのですが、実際にはそれはなかなか実現することが難しいです。なぜならば、その当該製品の開発者や研究者の特性が邪魔をするからです。

 この認識の違いにより、企業側は余計で複雑なスペック開発に走ってしまい、時間を浪費してしまうことが多々あります。

 大事なポイントを繰り返しますと、「顧客のニーズを過不足なく充足する製品は何か」を検証するために、ムダを極力省いた製品を使って素早く何度も仮説検証する。そして、アーリー・アダプターのニーズを過不足なく充たすには「必要最小限の製品」があれば十分なのです。



3)ビジネスモデルキャンパス~VPとCSがポイント~


 通常、人財育成プロセスにおいては、ビジネスモデルキャンパスを創りながら次世代経営者の視座を高めていきます。我々はいったい顧客に何を提供しているのか。そもそも我々の顧客とはどんな人なのかという経営の原点に立ち返ります。そして、われわれが提供したい価値の差別化ポイントはどこにあるのかというブランド戦略にも立ち入って考えることが求められます。

 例えばこんなことがありました。

 テレビコンテンツの制作会社にて、当初は品質の高いテレビ番組を創ることが、最大のVP(バリュー・プロポジション)であると、経営陣を筆頭にほとんどの社員がそう思っており、最高の品質にこだわり続けて、徹夜続きの日々でした。おそらく業界では断トツの長時間労働です。ただし、根幹は品質へのこだわりですから、だれも厭々やっている者はおらず、それは当然の事ととらえるカルチャーになっていました。

 そして転機が訪れます。創業以来始めての顧客インタビューの時でした。社員一同茫然とした瞬間です。「品質はそこそこでいいんだ。我々が御社と取引を長年続けている理由は、実は【安心感】にあるんです。安心感といっても2つの安心が大事で、納期と番組コンセプトの一致。この2つの安心感が得られないと、我々はどんなに価格が安く提示されても取引はしません。」

 このインタビュー後設計した、我々の本来提供するべきバリューを中心に組み立てなおしたビジネスモデルを下記に例示しておきます。



4)ビジネスモデルキャンパスと人財評価基準


 メインターゲットであるCSに提供するVPが的確に設定できたら、あとはそれを実現する主な活動項目をKA欄に記入します。すると今までの評価基準では見えなかった、価値をもたらす行動が見えてきます。上記の制作会社の例で言うと、顧客の経営戦略を理解することが最も大事なことだったにもかかわらず、明示されていなかった(気付かなかった)ことにより、だれも行動していなかったということに気付かされます。

 仮に行動している人財がいたとしても、今までは全く評価の対象にならなかった事項です。つまり、この会社がクライアントに提供していた価値(バリュー)≒ブランド価値は、社員の無償の行動によって今まで支えられていたことになります。これらVPを下支えする重要なKAを見える化し、評価基準に落とし込んでいくことを推奨します。なぜならば、最も真似されにくい価値≒ブランド価値を提供する源泉は人財の行動にあるからです。

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