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  • 津田識義

第25回 今、経営者が集中すべきこと ~経済的側面より~

 円安が進み、各種原材料が高騰している厳しい経営環境の中で、企業及びそれを牽引する経営者が、今、何に最も集中すべきかを今回は述べていきたいと思います。


(1)円安のインパクト


【円/ドルレート40年推移グラフ】

                            ※世界経済のネタ帳より


 上記40年の推移グラフを見てみると、赤でくくった部分を大局的に見てみると相対的に然程大きな変動はなく、平均すれば100~150円のレンジを行ったり来たりしています。

 とはいうものの、2010~13年前後、海外の仕事をしていた小生は90円/ドルで生活していました。あまりお金が減らなかった記憶があります。フルオーダーのスーツでも2万円台、お腹いっぱい食事をしても1,000円(ビール込み)を超えることはめったにありませんでした。当時と比較すると、すべてが1.5倍に跳ね上がります。これはなかなか打撃が大きく、当時10万円で買えていたものが、15万円するわけですし、日本の年金をベースに海外で生活している方などは死活問題かと推察します。(毎月の生活費が20万円だった方が、13~14万円で生活しなければならない状態)

 


(2)円安の正体は日米の金利差

                           ※Lets Gold ホームページより



 上記のグラフは、日米の金利差が大きくなると、円安に振れる傾向が強いことを示してみます。直近30日間の相関係数:0.92371とほぼ完全相関に近い状態です。


●アメリカのスタンス

 8月26日ジャクソンホールでのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演のキーメッセージは「景気を犠牲にしても物価高を定着させない」という強い意志でした。

 その結果、同日の米国株価を大幅に下落させる結果となり、同日のダウ平均株価は1,000ドルを超える下落を見せました。


●日本のスタンス

 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続 するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。 マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の 実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。

 当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融 市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置 を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水 準で推移することを想定している(7月21日:日本銀行 当面の金融政策についてより)


 この両国のスタンスの違いが最近は顕著です。




(3)なぜ金利差を埋められないのか

 一目瞭然です。ものすごい勢いで増えております。


●答えは日銀の債券保有率

 半分が日銀、その他金融機関を合計するとほとんどが国内で持っていることになります。金利を上げてしまうと、その支払いを自ら行わないとならないわけです。


 1,000兆円の1%は10兆円。1日あたり270億円金利だけで借金が増えていく勘定です。もし仮に、上記FRBがさらに本気を出して金利を4%に引き上げたとしましょう。日本もこれ以上の円安は容認できないとして金利差を埋めるべく4%にしたとしたら、金利だけで1日1,000億円借金が増えることになります。これはさすがにまずいですね。



(4) 庶民(一般社員)は苦しんでいます


 ステルス値上げが店頭で目立ています。小生が実感するのは、某有名餃子チェーン店の餃子が細くなった(約2/3のスリムさ!)ことと、6Pチーズの高さが半分くらいになってしまったこと。幼少期から食べていますのでとても悲哀を感じます。これ以上円安が進んで、原料高が進めば、スライスチーズになってしまうのでは恐怖を感じます。今マイブームの桜チップの燻製をすると原型がなくなり、とても食べにくくなってしまっています。肌感覚としてはステルス値上げも限界にきていて、年末頃にはは価格に転嫁せざるを得ないのではと感じております。

 それでも、給料をあげていければ、何とか生活レベルに影響せず、みな安心して暮らしていけると想定できるのですが、日々企業倒産情報が飛び込んできています。



(5) 打開策は賃上げなのですが・・・


 打開策は賃上げとわかってはいても、現状の売上のままでは、原価が上がる傾向にあり、さらに販管費が増えるわけですから、利益が吹っ飛んでしまいます。



(6) 結論:とるべき行動は企業価値(バリュー)を上げる、です。


・今後、割安感が企業価値、もしくは明確な価値を表示していない企業からバタバタと倒れる予感がします。

・そうならないためにも、値下げとは真逆の価値(バリュー)を打ち出す必要があります。

・過去1、2度失敗したからといって、あきらめてはいけません。その場合はその失敗要因を突き詰め、それを反転させる打ち出しをする覚悟が必要です。



次回は、企業価値(バリュー)の高め方にについて考察したいと思っております。


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