top of page
  • 津田識義

第6回 目標設定(ビジョン構築と浸透)










1) VUCA時代のビジョン構築


 不安で先行き不透明な時代であるからこそ、ビジョンの設定がとても大事になります。なぜならば、ビジョン設定により、自社のフェアウェイはどこからどこまでなのかを定めることになるので、全社ビジョンから事業部さらに部門、課とブレークダウンする際の指針になるからです。

 このフェアウェイが定まっていないと、社員の動きが分散され、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・時間)の浪費につながってしまうからです。



 先日、懇意にさせていただいているトップと会談する機会があり、A・B・Cの3部門の目標管理制度を充実させたい。どんなKPIを設定したらよいか?という相談をいただきました。なぜならば、現在の目標管理はどの部門も共通で、財務目標(売上、粗利、営業利益等々)しかなく、3部門でほぼ違う業務をしているために、うまく評価に反映できず、社員のモチベーションが上がらないという悩みでした。


そこで、私は以下3点の質問をしてみました。


①まず、3部門のビジョンはありますか?3つの事業が異なるビジネスモデルを有し、

 それぞれ違うバリューを異なる顧客に提供しているならば、

 その違いを明確にして、異なる目標を設定するのが筋だと考えますが、

 いかがでしょうか ⇒ NO


②その3事業を包括する全社ビジョンはありますか? ⇒ NO


③そもそも部門のリーダーを筆頭に、目標達成に対し、

 強いモチベーションをもっていますか ⇒ NO


 企業トップの目標管理制度の充実というオーダーに対し、人事部門担当取締役は、どこか上手くいっている企業のKPIを調査して、そのまま自社にコピーしようとしていました。

 私は、申し訳なかったのですがストップをかけさせていただきました。なぜならば、5年先、10年先の企業の進むべき道が見えていないで、さらに社員達が自分たちの日々の業務が会社のどの数値に影響しているかも不明の中、ただルーチンワークを上から言われるまま日々こなしている状況で、いくら他社で成功しているからと言ってそれをそっくり持ってくることは、単なる目標値の言葉の置き換えにすぎず、なんら経営に良いインパクトを与えるとは到底思えなかったからです。

 その時、私の提示したプランは大筋以下の通りです。

※途中で知識が足りなければそれを補い、だれが本気でやってくれるのかを見極める(アセスメント)のがコンサル(この場合はコーチの役割に近いでしょうか)の役割です。


●バックキャスティング(予測不可能の時代に有効)

 バックキャスティングは、予測・フォーキャスティング(Forecasting)と異なり、求められる理想の未来像から現在を眺める方法です。未来像、あるいは理想の状態から現在の課題を認識するという方法自体は、ギリシア哲学をはじめ、昔から存在していますが近年現実経済活動の中で積極活用されたのがエネルギー業界です。環境やエネルギーの課題は、課題解決ができなかったときの負の影響が非常に大きいため、最悪のシナリオを避けるために未来からの逆算であるバックキャスティングが重視されるようになりました。

 近年はイノベーションや新しいアイデア立案の際のスタンダードになっています。特に、少子高齢化、グローバル化、IT化によって社会のあり方や個人のライフスタイルが劇的に変化しつつあり、その変化を追わずに本質的な解決策となる事業構想をたてることは不可能です。

 そう考えると難しく感じてしまうかもしれませんが、まとめますと次のシンプルな計算式になります。



2)絵に描いた餅からの脱却


 自分事としてとらえること。天(上層部)から降ってきたビジョンはあくまで他人事という認識になってしまう傾向が強いので、ではどうするか?自分達で創らせる、もしくは作成プロセスに上手に組み込むこと。つまり、当事者意識の有無が絵に描いた餅からの脱却のキーワードになります。

 コーチングでSuper Visionという手法があります。目標に達成したら、どんな世界が広がっているか、どれだけの達成感と充実感を味わえるか。ということをリアルに仮想体験してもらう方法です。このSuper Visionがうまく且つ強烈にできれば、あとは障害を取り除いてあげれば、目標に向かって邁進する基本ができあがります。


3)ビジョンの浸透

 企業で良くみかけるビジョンが「20XX年にXXXX億円を到達する」等、もしくは文章の羅列。これですと本当に意図している、心の底から実現したいと思う世界感・背景が伝わりにくいのです。



●パーソナルコンピューターのビジョン by アラン・ケイ 1977

















 長方形をした一枚のディスプレイ。そのカタチは、パソコンを飛び越えてタブレット端末のようです。新聞を超える解像度を持ち、ハイファイ並みの音質があり、価格は1,000ドルを切る。ビジネスマンは将来の動向を見ながら意思決定し、また連絡し合うツールになる。

 家庭では、家計簿やレシピ代わりになる。医師は全てのカルテを持ち歩き、建築家は設計のシミュレーションを行い、作曲家は作曲しながら同時に聞くことができる。そして子どもたちは、読み書きするように映像やゲームを楽しみながら学ぶようになる。


 1977年といえば、八甲田死の彷徨(新田次郎)がベストセラーになり、ビックリマンチョコやチュッパチャップスが発売され、渚のシンドバット(ピンクレディー)が1位を取った年です。とはいっても40代未満の読者の方々はピンとこないでしょう、はるか昔の話です。


●ビジュアル化のポイントは

①だれが(登場人物(主人公))

②何を、どこで

③どうしているか


 以上3点に留意し、ご自身の世界観をビジュアル化していただけると全社に浸透し、

社員の共感は得やすくなるかと思います。


 ◆次回はプランニングプロセスの“現状“に話を移します。




最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page