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津田識義

第3回 組織デザイン

第2回の対AIという構図における“人間様“が今後価値を発揮できる領域の1つとしてデザインを挙げましたので、戦略について話を展開する前に、組織デザインについてポイントを語っておきたいと思います。



1)強くて良い組織を創るための5つの壁

 そもそも組織デザインの出発点は、人の集まりに連帯感を持たせたり、コミュニケーションを活発にしたり、共に働く人々の相互理解を深めて良好な人間関係を築くという取り組みでしたが、徐々に組織の競争力を高めるための経営活動へと進化してきています。

 連帯感があり、風通しがよく、組織に属する人々の間に信頼関係があるということは、組織にとっての最低限の条件となり、企業業績の向上や戦略目標の達成にはまだまだいくつかのこえなければならない壁があります。まずは組織の最低条件を整えていただき、もう一段レベルを上げて、強くて良い組織をつくるために5つの壁を突破する必要があります。

強くて良い組織は、次の五つを備えています。


1.経営に対する信頼に基づく組織へのコミットメントがある。

2.組織を牽引するリーダーが多数存在し、そのリーダーたちはもちろん、メンバー達がずっとこの組織で働き続けたいと強く本気で思っていること。

3.メンバーそれぞれが仕事を通じての成長とやりがいを常に感じていること。

4.現場まで理念が浸透していて、最低限でルールのみでオペレーションが完遂すること。

5.変化への適応力があり、リスクをとれること。


 バーニーの戦略論の核であるVRIOでも言われていることですが、組織デザインは、企業の優位性と差別化をもたらします。

 5番目の変化への適応力が大事なのは、第1回目のVUCA時代の経営でポイントを書きました。ここは本来組織の話よりも先に書くべきではありますが、今回は第2回との流れで組織を優先しております。ご容赦ください。第5回以降でじっくり考えていく予定です。

 また、1~4は組織に対するコミットメントの話ですので、後々話を展開していきます。



2)経営者あるある:適材適所

 前述の5つの壁については、経営者であるならば、書籍や講演会等で多く耳にしているはずなのですが、どういうわけか未だに適材適所の発想で、あたかも趣味のように毎年組織図を変更する経営者の方が多数おります。

 まずは、経営幹部の顔を思い浮かべ、幹部Aは●●だし、この部署よりも新規部門のほうが向いていそうだ。とか、そういえば幹部Bがこの前熱意的な新規事業の提案をしてきたから、新規部門を立ち上げ責任者を任せてみようとかいう発想で、基幹の部署のリーダーを決め、実務を担当するメンバーは大きな変更をしないケースを散見します。まさに適材が先で適所があとの発想になっています。



3)適所適材へ 組織は戦略に従う

 企業業績の向上や戦略目標の達成を目指すためには、まずは今とこれからの環境を、今までの戦略で乗り切れるかという検証・目利き・先読み・シミュレーションをしてみることが肝要です。これなしに人の異動をしたところで時間と社員の労力の無駄遣いをしてしまいます。

 今までの戦略でいけるのであれば、組織はそのままもしくは若干のモデルチェンジでよいのですが、大幅に舵を切りなおすのであれば、場合によってはゼロベースで組織のデザインが必要になります。

 新しい戦略を熟考の上決定し、その戦略目標を達成させるためには、どのような機能が必要なのかを考えます。

 例えば、本店1店舗が大変好調で、このビジネスンモデルが他のエリアでも通用しそうだと確信をえたならば、エリアマーケティングを開始し、次の2店舗目、3店舗目をどこに出店すべきかを考える必要があり、店舗開発部を新設します。店舗開発部の主要ミッションは以下3点になろうかと推察します。


①本店と同程度の集客見込みがあるエリアの発見、選定する

②そのエリアにあった業態をデザインし、店舗の基本設計を実施する

③その現場を任せられる店長を人事部と共同で育成する


 このような流れで組織をデザインすることを推奨してまいりました。具体的なツールとしては業務組織図がお勧めです。



4)業務組織図サンプル(例)

 各マスの中に、事業部・部門のミッション(役割)とコンピテンシーを記述し、人の名前は最後に書きます。適所適材の順番が大事です。今回はとても小さなメーカーの立ち上げ時の業務組織図です。



◆次回はコンピテンシーマネジメントについて話を展開します。

 次いで第5回以降は本題の戦略についてお話ししていく予定です。


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